触覚ワークショップ 2000
   
創形美術学校 ・ 女子美術短期大学
  

 

 

        

表現の基本は、人間の五感を刺激しながら共鳴を計ることである。

アナログからデジタルへと目まぐるしい変化の時代において、触覚への回帰を強く意識す

る必要がある。テキスタイル表現は、視覚的効果もさることながら触覚へのデリケートな

配慮が大切である。アート・デザインへのアプローチとして、私は五感の大切さを語るこ

とにしている。テキスタイルに限らず観察は、表現への第一歩となるが同時に、原始的な

触覚を呼び起こさせる行為から私の授業は始まる。例えば、植物の表現においても筆、鉛

筆にくわえて、指による描写、触覚の感触をビジュアル化、既成概念を取り払うことから

表現の面白さも見えてくる。描かれる紙、布の感触。同じ紙でも種類により様々な触覚感

を確認できる。つまり表現は、自分で発見確認しながら展開することである。

『子供の時を思い出した』『温度を感じた』特に植物への視覚的イメージと目を閉じて体

感する大きな違いに改めて多くの驚きを持つ。このような体験を、どのような方法で具体

的な表現へ繋げていくかである。ここからそれぞれの専門領域での技法や素材が浮かび上

がりアート、デザインへと展開していく。



足で表現する。このワークショップは、広い床に紙を敷き詰め墨汁で黒くした足で歩き回

る。子供に帰ったような行動が全身からほとばしっている。黒い足跡が重なり繋がり巨大

な抽象絵画が表出する。乾きを待つ間素足で、しかも黒い足で、街中の散歩にくり出す。

「熱い・冷たい・痛い・このテニスコート柔らかいんだ」 「靴を履いてるのが変に見える」

「東京は汚いと思っていたけど足で感じるとそうでもないね」など多様な意見が飛び交う。

乾いた巨大な紙が、屋上、ベランダに運ばれ垂直に垂れ下げられた。歓声が上がる。視の

違いと空間に飛び出した一枚の紙が堂々と空に舞う姿は他のものを圧倒する。道行く観衆

も拍手する。『紙じゃないみたい』『パフォーマンスだね』風に乗り、音をたてて、それ

は自由に演技をしているようだ。数時間で確認された行為を通しそれぞれの領域の糧にな

ることを期待していた。



2校の専門領域は異なっている。創形美術学校は、ビジュアルデザイン1年生・女子美術

短期大学は、テキスタイルデザイン専攻科と2年生の学生達である。

創形美術学校では、触覚のビジュアル化として、3週後にそれぞれのプレゼンテーション

を平面、立体、インスタレーションで行った。女子美は、空間のトリミングから紙のレリ

ーフへ展開することで終わったが、テキスタイル表現への応用を示唆した。

技術の放棄から創造は始まる。しかしそこには、メタモルフォーゼされた強い意識した放

棄を忘れないでほしい。表現領域を横断する知識と知恵を支える造形の基礎体力作りに、

このワークショップが役に立つことを願っている。

     

田中 秀穂

   

   

両校での様子を記録した写真をご覧下さい。

       

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